夏の夜空に炎で描かれた文字が浮かび上がる京都の「五山送り火」は、京都四大行事のひとつです。
毎年8月16日に執り行われ、「大文字」・「妙法」などの炎の文字は、お盆に迎えた精霊を再び冥府へ返す送り火とされています。
その幻想的な伝統行事を一目見ようと、全国各地から10万人を超える見物客がやって来ると言われています。
ところで、五山送り火で浮かび上がる文字「大・妙法・船・左大文字・鳥居」にはどんな意味があるのでしょうか?
「大・妙法・船・左大文字・鳥居」の意味と豆知識をまとめました。
五山送り火の「大」の意味は?
「大」の持つ意味としては、様々な諸説があるようです。
1つは、この世を構成する「地・水・火・風」の四大要素の四大の「大」を表すという説。
2つ目は、「地・水・火・風」に「空」を加えた五大要素の「大」を表すという説。
3つ目は、「大」の字を分解すると「一」「人」という漢字に分解することができ、これを一人の人間(人形・ひとがた)と見立てて無病息災を願う目的があったという説。
4つ目は、「大」という字は魔除けの象徴でもある五芒星(ごぼうせい)の意味があるという説。
5つ目は、1年を通して位置が変わらない北極星(神の化身とみなされている)をかたどっていて、地上の不動の山とする説。
6つ目は、弘法大師空海が大の字に護摩壇(ごまだん)を組んでいたから「大」の字にしたという説。
ちなみに護摩壇とは護摩を焚く炉を据える壇のことで、護摩とは、供物や願い事を書いた木を焼いて祈願する儀式のことです。
最後に密教での教えでは、五山の送り火は弘法大師空海による護摩供とされています。
平安時代、京の都に疫病が流行り、空海は都全体を浄化するため護摩焚きしようと思いついたようです。
空海は東寺にいて御所の位置を「護摩壇」に見立て、銀閣寺の上方にある一つ目の「大」は胎蔵界の大日如来、金閣寺の「大」(左大文字)が金剛界の大日如来を表しているようです。
五山送り火の「妙法」の意味は?
鎌倉時代の日蓮上人の孫弟子の日像上人が、ある村で法華経を説いたところ、村人全員が日蓮宗に改宗したのを喜び、日蓮宗(法華宗)の題目の妙法蓮華経から、「妙」の字を送り火としました。
「妙法」には「素晴らしい法」という意味があり、日蓮宗(法華宗)のなかではたくさんあるお経の中でも最高のお経(法華経)と考えられています。
妙法は、日蓮宗(法華宗)に帰依していた人を送るという意味があるようです。
左の山から「妙」「法」となっており古来の書き方では右から左へと書きますのでおかしいですが、はじめは「妙」しかなく、後の時代に「法」を付け足そうとしたところ、「妙」の左の山にはスペースがなく仕方なしに右に付け足したそうです。
五山送り火の「船」の意味は?
舟形は「精霊船」と呼ばれることもあり、船首は西方浄土を指しており、精霊を送るための船であると考えられています。
平安時代の西方寺の開祖・円仁が唐からの帰路で遭難しかけたところ「南無阿弥陀仏」と唱えて無事に帰国できたことから船が描かれた説もあります。
同じく平安時代に疫病が流行り、数万人の犠牲が出てその供養のために「大乗仏教」(多くの人を救う)の教えから船の形になりました。
大乗の「乗」を「船」と見做して大文字山の「大」と「乗」を組み合わせて大乗仏教を表している説もあります。
五山送り火の「左大文字」の意味は?
昔はかがり火(台を設けて焚いた火)で演出されていたため、毎年、形が変わっていたと伝わっています。
起源としては、1673年から1681年に編纂された『山城四季物語』という書物に記述が見つかっていることから、1673年から1681年が起源とみられています。
もとは「大」ではなく「天」の文字であったという説があります。
五山送り火の「鳥居」の意味は?
鳥居形にも諸説あるようです。
1つに、弘法大師が石仏千体を刻んで開眼供養したのを機に、鳥居形が作られたという説。
もう1つに、麓の愛宕神社の鳥居にちなんで鳥居形が作られたという説があります。
なお、京都五山送り火の中でも鳥居形は最後に点火をされますが、この鳥居形は愛宕神社の神意を現す形であり、京都に災い事が入らないようにするためと言われています。
まとめ
何百年も昔から毎年8月16日に行われて京都で受け継がれてきた伝統行事・五山の送り火の文字の意味「大・妙法・船・左大文字・鳥居」の豆知識についてまとめてきました。
どの文字の意味にも様々な諸説があり、正確なことは分かっていないものも多いようです。
本当はどれが正しかったのか気になりますね。
コメント
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